第1章 夜暁
なんとか、一日ミスすることなく乗りきった仕事が終わったのは。
まさかの定時。
まだまだ、日が沈む前だ。
着替えを終えて、更衣室をあとにして。
車に乗り込んだすぐに、まるで見ていたかのようなタイミングで。
バックの中の携帯がなった。
『あれ、終わったの?』
自分からかけてきたくせに、まるで私が携帯に出たのが不思議と言わんばかりのいい様。
「終わったよ、今帰るとこ」
『お疲れ。……………今日、旦那は?』
「まだ旦那じゃないよ。来ない」
『ふぅん、じゃ、30分で着くから』
「………………うん」
私の予定なんて。
彼には関係ない。
彼が来るなら、私は何よりも誰よりも、彼を優先するから。
疲れてたって。
彼にはそんなこと、関係ないんだ。