第2章 朔
「………………」
「………………」
お互いに、動きを止める。
頭上では、本日一発目の、花火が上がったところだった。
「出て、いいよ?」
「……………ああ」
握られていた右手が、離れてく。
まだ、しーちゃんの手の温もり残ってるのに。
さっきまで、あんなに楽しかったのに。
回りを見れば。
幸せそうな恋人たち。
花たちも、こんな風に見えてる?
『恋人同士』に、見える?
花火がゆっくりと上がるのを見ながら。
幸せの時間が終わるカウントダウンが、始まるのを感じてた。
「ごめん、花。ばーちゃんが入院したみたいで、着替えとか持ってかなきゃいけなくなった」
「そっか、大変だね」
「花、一人で大丈夫?」
「澪に連絡してみるから、大丈夫だよ?」
「ほんと、ごめんな?」
笑顔で手を振って、しーちゃんの後ろ姿を見送るけど。
しーちゃんは1回も花を振り返ることはなかった。