第2章 朔
もう1度、スプリングの軋む音がすると。
左肩を押されて。
背中がベッドに沈む感覚。
と。
同時に。
遠慮なく重なった唇から、もちろん遠慮なく流し込まれたものに。
一気に、むせこんだ。
「ごめん、花、大丈夫?」
体ごと横向いて、必死に首をふる。
「花?」
苦い。
喉が、からい。
むせすぎて、声が、出せない。
出せない声のかわりに、涙が流れてくる。
「花?」
「しー、ちゃ、なに?」
背中をトントンしてくれるしーちゃんを、なんとか見上げた。
「大丈夫?」
「…………じゃ、な」
苦くて。
体が熱いよ。
「なに、飲ませた、の?」
「ワイン」
さっき、澪が飲んでたやつ?
口許を拭うと、さっき飲みきれなくて零れ落ちた液体が、袖を濡らした。
「もっと飲む?」
また肩を押されて、真上にしーちゃんの顔がくる。
「いらない」
「花気分は?」
気持ち悪い。
口の中、苦いし熱い。
気分なんてしらない。
気持ち悪い。