第2章 朔
「大丈夫?花」
「………………へー、き」
全力疾走した後みたいに動きの早い心臓以外は。
たぶん、いたって元気。
「誕生日、おめでとう、花」
「ありがとう」
両手をしーちゃんの首に回して抱き締めたいのに、体が全然動かない。
指先でさえ、言うことを聞いてくれない。
「ねぇ、花?」
「ん?」
「しよっか」
「え?」
「隣、まだ澪たち起きてるから、声我慢できる?」
「しー、ちゃ?」
働かない思考回路でも、しーちゃんの言葉の意味くらいは、理解できた。
一気に、酔いが覚めてくる。
「しーちゃん、無理。澪たちいるのに、無理だよ」
「さっきは、澪の前で自分からキスしてきたのに?」
「あ……………れ、は…………っ」
たぶん、酔ってた、から?
だんだん覚醒してきた意識では、絶対に、無理だよ。
いや、酔い潰れて記憶なくしてたとしても、絶対に無理。
「お酒入ってるし、いい感じに出来上がってる花がいて、襲わない方が無理じゃん?」
「しーちゃ、お願いほんと無理」
思いきり頭を横にふると、それだけでクラクラする。
「そんなふったら、余計まわるよ?」
「………………クラクラ、する」
動かせるようになった手足を動かして。
横向いて丸くなると、少しだけ楽になった。
「じゃ、もっと飲んじゃおっか?」