第2章 朔
寝室のドアがあいて、ベッドにおろされると。
さっきと同じ唇が重なった。
「…………………んんんっ?」
半分だけ夢の世界にどっぷりと浸かった意識は、いきなりの酸欠状態に一気に現実へと引き戻されて。
「…………しー、ちゃん?」
「起きた?」
ついでに、ベッドに横たわる花を跨ぐしーちゃんの体重分、スプリングが音を立てる。
見下ろすしーちゃんがすごくかっこよくて。
視線が外せない。
「……………とろんてしてる。お酒のせい?」
親指で唇をなぞられれば、金縛りにでもあったみたいに体が固まる。
体中の血液が気化でもしちゃったみたい。
なんか、いつもとちがくない?
「かわいい、花」
何度も何度も重なる唇に。
呼吸がだんだん荒くなった。
呼吸が、出来ない。
アルコールのせいでいつもの倍以上の働きをしてる心臓からも、酸素不足は深刻な問題。
酸素を取り込みたくて、必死に顔を背けようとしても。
すぐにまた。
しーちゃんの唇に掴まっちゃう。
「……………しー、ちゃ」
死んじゃう。
やっと唇が解放された頃には、酸素不足で。
全然思考回路はその役割を果たしてなかった。