第2章 朔
「ちょっと、花!」
しーちゃんの首にまわした両手ごと澪に引き剥がされて。
「なぁに、澪」
少し不機嫌に、澪を見つめた。
「花、焦点あってないよ?自分がなにしたか、わかる?」
「しーちゃんにキスしたよ?」
「花、1回落ち着こう?」
「花、落ち着いてるよ?喉渇いた、なんかある?」
「花、ジュース飲む?」
「飲む」
「花、結城からもらったもの、飲んじゃだめ!」
「人を変質者見たいに言うなよ」
「修、これもなんか入れたろ?」
「酔った花、面白くて」
「あんたのせいでしょ」
お酒って、こんなに気持ちいいんだ。
20年間生きてきて、はじめての感覚。
ふわふわしてて、すごくいい気分。
みんながお酒飲みたくなるの、わかる。
「あ、花、それ」
テーブルに置いてあった冷たいビールに手を伸ばすと。
迷わずそれを口に流し込んだ。
「………………おいしくない」
苦い。
苦い苦い苦い。
何これ。
喉が苦いし辛い。
「なんか、甘いのー」
口の中、苦くて気持ち悪い。
「花」
軽く戻ってきたまともな意識で、涙目になりながらうぇーっと出した舌ごと。
ふわっと。
唇に触れた柔らかい何かに、吸い込まれた。
と、同時に。
口の中に流れ込んできたのは冷たいジュース。
コクン、と。
鳴いて、喉が喜ぶ。