第2章 朔
「澪って、しーちゃん嫌いだよね」
「ああ、あいつはお前が大好きだかんな」
「藤崎さんは、しーちゃんと仲良いよね」
「ん、まぁあいつの女癖悪いの今に始まったことじゃねぇし」
「女癖…………」
「花みたいなのは、はじめてだけどな」
「花みたい?」
「修がここまでひとりに執着すんの、はじめてだから。ほんと、なんで付き合わねぇのか不思議だよ」
「執着…………」
「まぁ、お前みたいにあんな風になつかれたら、悪い気はしないけどな、男として。」
「そう?」
「お前、犬みたいだし」
換気扇の下で煙草を吸いながら笑い出す藤崎さんを軽く一睨みすると。
わざとらしく咳払いしながら、彼は話題をかえた。
「でもさ、お前はそれでいいわけ?」
「花?」
「また彼女になりたい、とか思わねぇ?」
いきなりの話題転換にしては、だいぶ核心をついてくる辺り、さすが、しーちゃんの親友で澪の彼氏だなぁ、なんて、思えたりもする。
「……………『彼女』になったら、しーちゃんは花にすぐに飽きちゃうよ」
「は?」
「彼女がいるから、しーちゃんは花に甘えられるんだよ」
「…………………ふぅん」