第2章 朔
「……………」
「……………」
にらみ合いを始めた澪と、しーちゃん。
先に視線を反らしたのは、しーちゃんだ。
「大丈夫」
ビールをキッチンに置きながら、しーちゃんは花の両耳をその手で塞いだ。
「バレてなければ二股にはなんねーんだよ」
「花にはバレてんじゃん」
……………本気で塞ぐつもりがあるのかないのか。
全然聞こえてますけど。
「花は二股とか浮気とか、そんなちぃせーこと気にしないんだよ」
「それはあんたがそうさせてんでしょ?」
ヒートアップしそうなふたりのにらみ合いから、するりと抜け出して。
キッチンに置いたままにしておいたジュースに手を伸ばした。
「………………?」
あれ?
なんか、苦い?
オレンジジュースだよね?
「どした?」
冷蔵庫に、ビールを取りに来た藤崎さんに、グラスを差し出す。
「これ、ジュース?」
「だろ?」
もう1度グラスを藤崎さんに渡すと。
一口口に含んで、首をかしげた。
「俺にはジュースにしか感じないけど」
「だよ、ね?」
気のせいかな。
澪としーちゃんの会話を聞きながら、手の中のジュースを一気に飲み干した。