第2章 朔
「………バレるような嘘つくから」
「しーちゃんは息するみたいに嘘つくもんね」
「は?」
なくなった缶ビールを冷蔵庫から取り出して。
一瞬、顔をあげるしーちゃんを無表情で見上げてみれば。
「ああ、やきもち?」
にっこりと、しーちゃんは笑って見せた。
「…………彼女は?今日」
「んー?大丈夫、気にすんなよ」
花のそばまで来ると、ビールを一口、口に流し込んでから。
しーちゃんは花を抱き寄せると。
そのまま頭のてっぺんにキスを落とした。
「花の誕生日、俺が祝わないわけねーじゃん?」
「………………うん」
「ーーーーー修」
今の今まで澪のご機嫌とりよろしく、澪の後を付いて回っていたはずの藤崎さんの、真剣な声。
に、甘いムードに入りそうだった意識が一瞬にして、引き戻された。
「…………まじなんとも思わないの、お前」
「なんで?」
「それ、彼女にする行動だよな?」
「花にしかしないよ」
そのまま、更に強く抱き寄せるしーちゃんに、勝手に体温が上昇する。
「それ、二股ってゆーんだよ、結城」