第1章 夜暁
さっさと帰る準備万端な彼は、いつものように唇に温度を与えていく。
「花の泣きそうな顔も、困った顔も、全部好き。すげー見たくなる」
「変態」
「花にだけだよ」
意地悪に笑って見せる、その表情、私も好きだよ。
「さっきさ、何考えてた?」
「さっき?」
「俺が起きた頃」
「ああ」
そーいえば。
「……………だから、言ったじゃん。しーちゃんに見惚れてたんだよ」
「なんか、泣きそうな顔してた」
「?好きなんでしょ?」
「俺以外のやつに泣かされんのはやだ」
「何それ?しーちゃん以外に泣かされたことなんてないよ?」
「笑顔でゆーセリフじゃねーな」
あはは、って。
ちょっとだけ大袈裟に、笑った。
「花の笑顔も、大好きだよ」
しーちゃんの笑顔は、私も大好きだよ。
「………………しーちゃん?」
ベットに上半身だけ起こした私の頭に触れるだけのキスをして。
そのまま彼は、私の頭ごと胸の中に閉じ込めた。