第1章 夜暁
「……………しーちゃんとこんな関係してなければ、もっと続いたかな」
「さぁな」
「別れて数時間で、他の男部屋に連れ込んでる時点でアウトだよね」
「…………そうかもな」
「…………ねぇ、しーちゃん」
「いいから、黙っとけよ」
ぐい、って。
顔ごと自分の胸に押し付けて。
しーちゃんは花の目元をそのまま大きな手のひらで覆った。
「……………………しーちゃん、ありがと」
『泣けよ』、って。
そう、言われてるみたいで。
隠された暗闇の中。
しーちゃんの掌にすがって、バカみたいに泣いた。
しーちゃんの優しさは、嘘じゃない。
こんなとき。
弱っているときに、突き放さないしーちゃんの優しさは、ずるいんだ。
そんなずるい優しさにすがって、甘えまくっている花は。
もっともっと、ずるい。