第1章 夜暁
痛いなぁ。
彼の低評価は全部、花のせい、
花が幸せそうにしないから。
彼ひとりを、悪者にしちゃうんだ。
ほんとは全部。
彼のせいなんかじゃないのに。
それを否定する正義感も、肯定する勇気も。
生憎と持ち合わせてない。
「ねぇ、花?」
「ん?」
「本気でさ、結城なんて好きでいたってろくなことないよ?花は、今みたいにドロドロに甘やかしてくれる人のが絶対お似合いだよ」
「…………うん、わかってる」
「花」
「大丈夫、ありがとう」
心配してくれる大切な友人に、心の底から笑顔が漏れた。
わかってるんだよ。
いけないことしてるの。
しーちゃんにも、花にもちゃんと相手がいて。
相手を騙してるの、ちゃんとわかってる。
それがいけないことなんだ、って、ゆーことも。
だけど。
それの何が、いけないことなのか。
わからない。
確かに相手に言えないってことは悪いことなんだ、って。
わかる。
わかるけど。
どーして。
しーちゃんに会うことが悪いことなんだっけ。
しーちゃんに触れることが、そんなに悪いことなんだっけ。
そんなこともわからなくなるくらい、たぶんもう。
しーちゃんの存在は花にとって麻薬みたいに浸透してたんだと思う。