第1章 夜暁
「行ってきます」
「ん、帰りまた迎えくるから、連絡して」
「ありがとう」
短大の手前で、乗りなれた助手席から降りると。
ちょうど登校してきた澪と鉢合わせ。
かち合った視線をがっつり外して。
彼が走らせる車に笑顔で手をふった。
「今日、休みなの」
「いい人だよね、彼」
「うん」
並んで歩きながら、笑顔でそう、答えると。
「なんでそんなに仲良さそうに見えるのに結城なわけ?」
「仲いいよ」
「じゃぁなんで結城なんかと会ってんの」
「彼としーちゃんは違うもん」
彼、は。
2コ歳上の、21歳。
しーちゃんが、花と別れてすぐにかわいい彼女を作ったのと同じく、花にも彼氏ができた。
彼は優しくて。
花を誰よりも愛してくれて。
甘やかしてくれる。
花の、大好きな大好きな、人だ。
そして。
花の『はじめて』の、人。
大好き。
この気持ちに嘘偽りなんてひとつもない。
だけど。