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依存愛-彼と過ごした3000日-

第9章 迷い


「………………好きじゃない、よ」


なんで。


なんでしーちゃんはこんなに普通なのに。
なんでパパなの。

なんで結婚なんかしちゃったの?


なんでいつも、しーちゃんは花のものになんないの。
なんでいつも、誰かのものなの。



「ごめん、花」


泣いてるの気付かれたくなくて。
窓の外見ながら、顔を隠したのに。

なんで気付かなくていいもの、気づくの。


「ごめん………。気付いてたんだ」


誤らないで。
ごめんなんて、欲しくない。
そんな言葉聞きたくない。




「先週、産まれたんだ」


聞きたくない。
聞きたくない。
今すぐ耳を塞ぎたいのに。
体が動かない。

「………………」

口を開いたらもっと酷く泣き出しそうで。
首だけ、動かした。


「気付いてた?」


もう一度、短く頷く。


「気付くよな」




気付かせないでよ。
もっとうまく、隠して誤魔化して。
得意でしょう?
なんでひき止めたの。
なんで車に乗せたの。

なんで、楽しい時間のまま、終わりにしてくれなかったの。




「花……」




わかってる。
わかってる、から。
仕方ないことだって。
わかってて、この人をもう一度好きになった。
全部承知の上で。
関係を持った。
わかってた、ことだった。


だけど本当は全然わかってなかったんだ、って。
今さら気付いても遅い。
傷付いたところでしーちゃんはなんにも悪くないのに。
全然悪くない、のに。
これしかもう。
思い付かない。
選択肢がもう、浮かんでこない。





「………もう、終わりにしよう?しーちゃん」






今ならきっと。
引き返せるはずだから。











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