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依存愛-彼と過ごした3000日-

第9章 迷い


香水の匂いが、消えたことも。

後部座席のガラガラも。

全部、見てるよ。

ほんとは見たくないことも、全部見えちゃうから困る。
どうせなら。
指輪をはずすくらいなら、そんな余計な気遣いができるなら。
気付かせないで欲しかった。


なんにも。
気付かせないで欲しかったよ。



「花、引っ越した?」
「え?」
「この前、アパート行ったら違う車止まってたから」
「………………引っ越した」

いつ、会いに来たの?


なんで連絡くれなかったの?

「なんで?」

「………………しーちゃんの思い出、多すぎたから?」

「俺?」

「そう、しーちゃん」

あの部屋には、しーちゃんの匂いが染み付いてて。
忘れたくても、忘れるなんて出来なかったから。
しーちゃんの思い出のたくさんあるあの部屋は、しーちゃんとさよならした花には残酷すぎて。
あのままあの部屋に住むことなんて出来なかった。


「そんなに、俺のこと好きだったの?」


また、その顔。
余裕たっぷりに。
自信たっぷりに。
目を細めて笑う、その仕草。


わざとだよね?

楽しんでる?


「忘れらんなかった?」



チラッと花に視線を向けながら、意地悪く笑うしーちゃん。


「……………好きじゃない」


なんでそんなこと言えるの?

しーちゃん、パパになったんだよね?





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