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依存愛-彼と過ごした3000日-

第9章 迷い



「それ、彼氏からの誕生日プレゼント?」







澪たちと、さよならして。
駅へと向けた足先。
なのにしーちゃんは、当たり前のように私を引き留めた。



『送ってく』。


いつも。

こんな風にいきなりしーちゃんは、花の目の前に餌をちらつかせる。
花が食い付かないわけないの、知ってるくせに。




「元気そうじゃん」
「元気だよ?」
「1ヶ月ぶりくらい?」
「くらい」



話ながら歩くこと、数分。
すぐに駐車場に着いた。

「寂しかった?」



助手席のドアを開けてくれながら。
意地悪そうにしーちゃんがそう、問う。


だけ、ど。


「………」



かすかに香る、ミルクの、匂い。


「花?」
「……なんでも、ない」


乗り込むのを躊躇した私に、降ってきた怪訝な声。
なんでもないようにそのまま車へと乗り込んだ。






久しぶりに乗ったしーちゃんの車は。

チャイルドシートが横向きに取り付けられていて。
助手席のシートは元に戻っていた
そして。
ミルクの、匂い。





赤ちゃん、産まれたんだ。



「花?」


黙りこんだ私に、運転席からしーちゃんが覗き込む。

「……………うん、寂しかったよ?」


しーちゃんに視線を戻して。
いつものように微笑んだ。







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