第9章 迷い
再びあるきだした優生に続いて。
足を動かす。
「でも、花がはじめての彼女じゃないでしょ?」
「そこ、気にする?」
「しないけど…………」
優生の行動みれば。
花がはじめての彼女じゃないことくらい、わかる。
それ以前に。
この優生のスペックを25年間もほっとく女の子も、いないだろーし。
「花?」
別に機嫌悪くしたわけじゃないんだけど。
急に黙り込んだ花を、たぶんそう勘違いしてる。
機嫌悪くする要素が今の会話であったとも思えないんだけど。
なんとなく面白いから、そのまま勘違いさせておこうかな。
組んでた腕をするりと抜けて。
一人で歩き出すと。
「花」
後ろから、優生の声。
「花だけだよ」
『彼女』、の定義がきっと違う。
花だけのわけ、ない。
優生がモテるのはもちろんわかってるから。
「機嫌治してくれるなら、いいものあげる」
「なに?」
振り向いて優生に駆け寄ると。
上から、優生の笑い声。
「単純」
「別に、機嫌悪くしたわけじゃないもん」
「手、出して」
「手?」
言われるまま右手を出すと。
「こっち」
そう言って、左手をとられた。
「?」
手首に、冷たい感触。
と一緒に。
カチって何かを嵌める音。
「………………これ」
左手首に視線を落とすと。
ゴツい感じの白い、腕時計。
「誕生日プレゼント」
「え」