第8章 甘い蜜の、対価、代償
記憶?
「この前の二次会、花、酔って寝ちゃったんだよ。綾瀬さんにおんぶされて」
「えぇ?」
お、おんぶ?
どんなシチュエーションで、おんぶなんてされるの。
しかもおんぶされたまま寝るなんて。
「そんときね、結城の名前、呼んだんだよ」
「……………………」
上がった体温が、一気に氷点下まで下がってく。
足元から、凍りついた気がした。
「綾瀬さんにも、聞こえてたと思うよ」
「……………………」
『しーちゃん』
優生の前で、散々呼んだ名前。
たくさん泣いた。
しーちゃんを思って、優生のそばでいっぱい泣いた。
それでも。
そんな花の話を聞いても。
好きって言ってくれた。
「浮かれて不倫の報告なんてしてる場合じゃないよ、花」
「浮かれてないよ」
「そう?結城とより戻って、幸せそうに見えるよ?」
………………言い返せない。
言葉が出ないってことは、肯定したと同じことに、なる。