第8章 甘い蜜の、対価、代償
「酔ってないよ」
「ふぁ…っ、あん、っぁあっ」
逃げ道なんてないのに。
容赦なく下から打ち付けてくる。
気付けば、両膝裏には優生の手が回されて。
大きく開かれた足から深く深く入り込む優生自身。
彼にしがみつく以外に出来ることなんてなくて。
自分から求めてるかのような錯覚が、羞恥心でさらに優生を締め付けるのがわかる。
「……っ、そのまま、つかまってて」
ぐ、と。
壁側へと体が押し付けられて。
さらに激しく揺さぶられる体に、思考が停止する。
「ぃや、ゆうっ、だめ……っ」
気持ちよくて。
なんにも考えらんなくなる。
「………っん、も…っ」
だめ。
限界。
「は……っ、っぁあ、ああっ、やぁぁぁぁっっ」
チカチカする真っ暗な世界に、意識が吸い込まれる。
そのまま、優生へと体を預けたままに、意識は途切れたんだ。
ブー ブー ブー
耳障りな振動が、規則的に体に伝わってくる。
いつもの定位置にあるはずの携帯に手を伸ばすけど。
あれ、ない。
まだ完全に覚醒しきってない頭をなんとか働かせるためにも、眩しい日差しの差し込む光に向かって瞳をあけた。
「まぶし……………」
カーテン、開けっぱなしだったんだ。
「ん…………?花?」
カーテンを閉めようと、上体を起こしかけたところで。
先程まで絡み付いていたがっしりとした腕に再度捕まった。
「優生、起きて、仕事」
首に巻き付いてきた腕を思いきり叩いてみるけど。
苦しいくらいに腕を巻き付けたまま、後ろからは寝息が聞こえてくる。
「し、ご、と!」
「ん……………?頭、いて」
大声で怒鳴ると、頭を抱えて布団に潜り込む優生。
ヤバイ、なんか、かわいい。
「朝だよー」
「んー、もうちょっと」
掠れた声がやけにかわいくて、思わず顔がにやけちゃう。
いつも花より先に起きて余裕たっぷりの優生が、今はベッドに潜り込んで丸くなってる。
やばい。
萌えちゃう。
「遅刻するよー」
「んん」
嘘でしょ。
動画とりたい(笑)
「綾瀬さーん」
「………………」
聞こえてきたのは、寝息。
このまま観察してたいけど、仕事本格的に遅れちゃう。