第8章 甘い蜜の、対価、代償
「ちょ…………っと、優生………っ」
ガチャン、てせわしなく開かれたドアを入れば。
そのまま玄関先でドアに体が押し付けられた。
頭の上に優生の腕が置かれて、光が完全に遮られ慌てて優生を見上げる、けど。
すぐに唇が重なって。
荒々しく重なった唇はさらに唇を割って口内へと侵入し、逃げ惑う舌を捉えながら奥へ奥へと進んでいく。
「ふ……っ、んん」
トロリと流し込まれたお酒の味がする唾液を飲み込めば、ようやく唇は離されて。
「なに?」
代わりに不機嫌そうな声が、降ってきた。
「すぐ、戻るって…………っ」
優生のものか、自分のものかわからない唾液で濡れた唇に、親指を寄せると。
優生はそれを指の腹で拭い自分の口の中へと滑り込ませた。
「………っ」
その、仕草に。
羞恥心が、煽られる。
「誰も俺が戻って来るなんて思ってないよ」
火照った瞳に、射ぬかれる。
「で、でも……っ、きゃぁっ!?」
ぐい、と両脇を抱き抱えられて、体が宙に浮く。
そのまま下ろされたのは、玄関に備え付けられた下駄箱の、上。
「ゆ、優生!?」
「ん?」
お構い無しに額やこめかみ、首筋へと唇を寄せる優生へと伸ばした両腕。
だけどそんなもの簡単に片手で押さえ込まれて。
洋服のボタンが、はずされていく。
「ま、って!!て、ば!」
「何」
「な、何、って……っ、ここ、で!?ぁの、する、の?」
「うん」
「でも、ここ、玄関、人通るよ?」
その、一言にボタンを外す指先がピタリと動きを止めて。
視線が、ぶつかった。
さすがに思いとどまったかな、とか安堵した、瞬間。
「じゃ、声、我慢しててね?」