第8章 甘い蜜の、対価、代償
こーやって。
ひとつひとつの小さな異変も見逃さない。
「………………優生は、なんで花、なの?」
「なんで?って、何が?」
「会社にも、優生狙ってる子いっぱいいるって」
花なんかよりも、数倍もきれいで。
面倒なんてみる必要ないような。
そんな子。
「そんなこと気にしてんの?」
優生に、合わせて足を止めて。
でも繋がれた左手はそのままで。
小さく首を左右にふった。
「優生は、花と対等じゃないよね。いつも上から、花に話しかけてる」
「対等って何が?」
「会社の人たちには、ちゃんと同じ目線で話してたし、接してた。でも花とは、違うよね?」
自分でもすごく、面倒くさいって思う。
そんなこといちいち気にしてたって仕方ないことなのも、わかってる。
第一私にそれを思う資格すら、ないのに。
「そんなこと?」
「え?」
頭上から降ってきた声は、私のモヤモヤした心とは正反対の、さっぱりした声。
「当たり前じゃん?花の前では、頼れる男でいたいし、花に甘えてほしー」
そのまま手を繋ぎながら、歩き出した優生の後ろを黙ってついていく。
「そーやって後ろにいられるより並んで歩きたいんだけど」
「……………はい」