第1章 夜暁
「付き合うの?付き合わないの?」
そんなしーちゃんの態度に、こっちまで藤崎さんのイライラが伝わってくる。
「なんで?」
藤崎さんのイライラに、気づいてんのか気づいてないのか。
たぶん絶対、前者だろーけど。
しーちゃんはさらっと、言ってのけたんだ。
「俺彼女いるし」
そう。
花と別れてすぐに。
しーちゃんは年下のかわいい彼女を作った。
彼はこの年下の彼女を、ほんとに文字どーり、溺愛、してる。
「結城、あんたねぇ」
「澪」
「花!こんな男庇う必要ないってば」
「………………付き合ってないと、だめなの?」
「「は?」」
花の疑問に、見事にハモってくれる、ふたり。
仲、いいなぁ。
動きも思考もどっかに飛ばしちゃってるふたりにはお構いなしに。
キョトン、としてる花を。
しーちゃんは笑いながら抱き寄せたんだ。
「花は何も考えなくていーよ。そのままの花が大好きだから」
そう言っていつも、人前でも構わずにおでこにキスしてくれるしーちゃん。
「うん」
だからきっと、大丈夫。
だってしーちゃんが大丈夫っていうんだもん。