第8章 甘い蜜の、対価、代償
視線を感じて顔を上げれば。
先ほどの『清水さん』、と、ばっちり目が合う。
「……」
そんな、あからさまに反らさなくても。
違うか。
見てた、のは。
私じゃなくて……。
「ねぇ、それそんなに強いの?」
顔を時々しかめながら先ほど私から奪ったグラスを飲む優生を、見上げる。
「甘いの」
彼女の視線には、当の本人は気付いてないみたいだけど。
「ジュースで割ってるから甘い。甘いの好きじゃないんだよ、あんまり」
「でも、チョコレートとか好きだよね?」
「うん」
「チョコレート甘いよ?」
「甘いね」
「意味わかんない」
「甘いのはお酒飲んでる気がしないの」
「そうなんだ」
「うん。ビールがいい」
そう言う優生の手には、先程と同じ大きさのビールジョッキ。
半分くらい、すでになくなってる。
先ほどのカクテルは、まだまだ残ってるみたいだけど。
「それ、何杯目?」
「これ?3杯くらいかな」
「大丈夫?」
「花みたいに記憶なくさないからへーきだよ」
「そ…………っそーゆーことじゃなくてね?」
「わかってるよ、大丈夫」
「……………」
やっぱり、さっきからチラチラ感じる視線は気のせいなんかじゃない。
そーだよ、ね。
この笑顔は、癒される。
こんな風に笑いかけられたら、ドキッて、しちゃうの、わかる気がする。
うん。
見る目あるよ、みんな。
優しいもん、優生。
好きになっちゃうの、わかる。
きっと私なんかよりも数倍も、優生にお似合いなんだとも思うよ。
ほんとに。