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依存愛-彼と過ごした3000日-

第8章 甘い蜜の、対価、代償


「ビールでいいかな」




お店に入るなり、『とりあえずビール』的なあれで。
何個か運ばれてきたうちの1個が、目の前におかれた。

「あ、あの私…………」


『お酒飲めないんです』

なんて言ったら、失礼になっちゃう?


「どーぞ」


「…………ありがとう、ございます」


目の前に置かれたビールを無下にも出来ず、手に取ると、ずっしりとした重さ。


これ、飲めるかな。


口つけるだけでもいい?


でも、苦そう。


目の前のジョッキとにらめっこしてると、「乾杯!」の声に合わせてグラスとグラスのぶつかる音。



一口だけ。


意を決してぎゅっと目を閉じた瞬間、手の中が急に軽くなった。
目を開けると、握ってたはずの重そうなジョッキが消えてる。


あれ?



「仕事終わりのビール、最高」


「ねぇそれ、彼女さんのでしょ?」


ダン


とテーブルに置かれた空のジョッキ。





の、代わりに置かれたのは言わずもがな、の、この色といいストロー付きのグラスといい。
まさしく烏龍茶。


「すみません、彼女お酒飲めなくて」


場の雰囲気を崩すことなく、笑いながら優生は職場の人たちと会話しだして。
代わりに。


「えー?少しづつ馴れた方がいいよ?職場の飲み会とかあるでしょ?」
「あ、はい。でもけっこうみんな飲まない人も多くて」
「そうなの?」
「不規則な仕事なので、何があるかわからないし」
「これとか、飲みやすいよ?飲んでみる?」


女性たちのからかい半分本気半分の、ヤジが飛んできた。





これって、花が断って場の空気壊すの待ってるよね。
鈍感鈍感言われるけど、こーゆー雰囲気くらい理解できるんだから。
いきなり現れたよそ者を警戒する、女性数人。
彼女たちの気持ちも、わからなくはないから。


「………………いただきます」


小さな円柱の細長いグラスを受け取って。
グラスを傾けた。



だけど。

「はい、ストップ」

そんな私のなけなしのプライドさえも、無下にしちゃうんだ。



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