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依存愛-彼と過ごした3000日-

第8章 甘い蜜の、対価、代償


「花?」
「あ……」


息を飲み込んだ私を、やっぱり心配そうに優生が視線で追いかける。


「な、んでもない。………っ、いいよ」


視線の先、知られたくなくて。
思わず発した肯定の言葉。

「いいの?花」
「え」

あ……。
しまった、と思っても時すでに遅し。
口から出てしまった言葉は、戻せないのだ。


「…っうん、少し、だけなら」
「わかってる。ありがとう花」


「………」



そんなに嬉しそうな顔、しないで。
胸が締め付けられる。
私今日。
あなたと別れ話、しにきたんだよ?
そんな笑顔、向けられる資格ないよ。







「綾瀬の彼女さん?急にごめんね、大丈夫?」





突然。
私と優生の間に入ってきた、歳上の男の人。
優生も、敬語ではあるけどすごく親しそうに話してるから、たぶん気心の知れた間柄。




「い、いえ。はじめまして、月野です」


だから。
動揺を精一杯隠して。
笑顔で自己紹介。
優生の評価を、こんなことで落とせない。



「………」


チラリ、と。
先ほどの方向へ視線をむける、けど。
そこにはもう、誰もいない。




人違い、かもしれないし。
さっき一瞬目があったのも、たぶん気のせい。


こんな偶然、あるはずない。




「花?知り合い?」
「あ、ううん、違う」



「急に巻き込んでごめんね。こいつが自慢しまくるから、ついついみんな悪のりしちゃってね」
「いえ、大丈夫、です」
「固くならないでいいからね?」
「………はい」



無理。
彼氏の職場の人たちの飲み会になんて参加しちゃって、固くならずに、なんて絶対無理だ。








「……………ほんとに、少しだけだからね?」


「わかってるよ」


笑顔で差し出された優生の手をとって、並んで歩き出した。







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