第7章 『混濁』
頭パニック状態で。
自分が発した地雷に気付いたのは、しーちゃんの表情を視界が捕らえてから。
「あ……………」
しーちゃんも、花が気付いたのに気付いたみたいで。
「『も』って、何」
低い、声。
「ああ、彼氏『も』、キスの時目あけてたんだ?」
「しーちゃ、ごめん」
「別に」
視線をそらして、しーちゃんが離れてく。
「謝られる筋合い、ねーし」
そのまま、運転席のドアを閉める音が真っ暗な中に響いた。
慌てて、助手席に乗り込むと。
シートベルトをする暇を与えられず、すぐに車は走り出した。
「あの、しーちゃん」
「彼氏好みに、ずいぶん調教されてんじゃん」
「ち、調教って……………」
聞きなれない言葉に、勝手に体温が上がっていく。
「慣れないヒール履いて、これ見よがしにマーキングまでされて。挙げ句キスまで彼氏好みに調教されたわけだ」
「き、きすのしかた、って」
えぇ?
キスって、やり方あったの?
なんか、変わったとこあったっけ?
「上目使いまで使って」
え、えーと。
待って。
上目使い?
「俺の前であんな顔、見せたことなかったよな」
え、えーと。
「ま、待って、しーちゃん!」
とりあえず、1回、落ち着かなきゃ。
上目使いも、どんな顔かも、もちろんキスの仕方とやらも、全然理解出来ないけど。
でも、これだけはわかったかも。
「しーちゃん、妬いてる?」