第7章 『混濁』
「花、最近よく抵抗するんじゃん?」
「だ、って、それ………………っ」
そんなの、当たり前じゃん。
しーちゃん最近、外とかトイレとか、そんなとこでしかキスしてないよ?
「あとさ」
「なに…………………んん?」
だから、ここ、駐車場。
しーちゃんのキスはいつも、何も考えられなくなるくらい、甘い。
さっき甘いの食べたの、花だよね?
なんでこんなにしーちゃんのキスは甘いのかな。
「やっぱり」
「…………………え」
唇を離されても、暫く思考回路が元に戻らない。
頭がボーッとする。
「花、どこでそんなキス覚えたの?」
「え?」
密着していた体を少し離して、車との間に私を囲った。
トン、て。
頭上にしーちゃんの腕が、つく。
「この前した時は、こんなじゃなかったよね」
「………………?」
思考回路が働かないせい?
この、距離のせい?
心臓がドクドクとうるさいせい?
しーちゃんの言っていることが全然理解出来ない。
「彼氏?」
意味が全然わからなくて、ただしーちゃんを見上げるしか出来ない。
「彼氏に教えてもらったの?」
怒ってるようなしーちゃんの表情に、ますます状況が理解出来なくて。
背中に車がくっついてるこの状況にも逃げ道すら見つけられなくて。
戸惑いながらしーちゃんを見上げた。
「花が苦しそうにしてる顔、好きだったんだけど」
「……………………っ」
苦しそうに、って。
キス、のこと?
一気に体温上昇。
それって。
いつもいつも、呼吸出来ないくらい深く深くキスしてたのは、意図的だったって、こと?
わざとだったって、こと?
て、ゆーか。
『苦しそうにしてる顔好きだったんだけど』って。
それって。
それって。
「しーちゃんも、キスの時目、あけてるの?」
なんで。
普通、キスの時ってみんな目あけてるの?
でもドラマとかだと、目、閉じてるよね。