第7章 『混濁』
視線を合わせたら、冗談言えなくなっちゃう気がして。
「してねーよ、女遊びなんて」
「そーゆーことにしといてあげる、花、オムライス」
わざとしーちゃんの言葉を聞き流して。
笑顔で、メニューから顔をあげた。
「冗談じゃなくて、ほんとに。昔ほど、モテねーし」
「ふぅん」
「花だけだよ、ほんと」
「………………っ」
ずるい。
そんな顔で、そんな、声で。
そんな言葉、言わないで。
「そ………………っ」
動揺してるの、知られたくなくて。
「そーだよね、花くらいでしょ?こんなにずっと片思いしてるの」
おなかすいた、って。
誤魔化して。
しーちゃんの視線から、逃げた。
「花しかいないよ」
「…………………だから、も、わかった」
「花」
勘違いしちゃ、だめ。
わかってる。
「うん、ちゃんとわかってるよ」
笑顔で視線を合わせて、はっきりとそう告げると、しーちゃんはそれ以上何も言わなかった。