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依存愛-彼と過ごした3000日-

第7章 『混濁』


「…………答えなくて、いい」




本気で、そんなこと聞きたいわけじゃない。
わけじゃない、けど。
『それ』はきっと、私が踏み込んじゃいけない領域。




「別に空気悪くするつもりはなかったんだ、ごめん花」
「わかってる。大丈夫」
「花」
「大丈夫、ちゃんとわかってるから」


「………」





こんなことで大事なこの時間、潰すわけにはいかない。
大丈夫。
ちゃんと花、笑えてるでしょう?




「どこ行くの?」


さっきからけっこう、走ってるけど。


「いいとこ」
「?」
「夕飯、まだだろ?」
「うん」
「花の好きそうなとこ、連れてってやるよ」
「花の?」
「そう、だから機嫌直して」
「別に、怒ってないもんっ」
「そう?」
「何されても花、怒ったことないでしょ?」
「ああ、確かに」
「いちいち怒ってたらしーちゃんのそばになんていらんないもん」
「………言うじゃん」
「ほんとのことでしょ」
「まぁなー、酷いことばっかしてきたのは、認める」
「あはは、認めた」
「認めるでしょ、そりゃ」


「…………さくらに好きって言ったり、とか?」



「━━━━ぇ」




「………」




嫌な顔、する?
しーちゃん、嫌いだよね、こーゆーの。
いちいち干渉されるの嫌だ、って、前の彼女の時に愚痴ってたよね。



「……聞いたの?」
「うん。………ほんと?」
「ほんと」
「………っ」
「嫌いになる?」
「………ならないよ」


花が、しーちゃんを嫌いになんてなれるわけないじゃん。
知っててわざと、聞いちゃうんだ。


「花」


呼ばれて顔をしーちゃんへと向ければ。
運転しながらチラリとこちらへと視線を向けて。
左手は頭をくしゃ、と撫で上げる。


「かわいいなぁ、お前ほんと」


そのまま左手は、髪の毛を弄ぶ。
こーやって髪の毛を触るのは、しーちゃんの癖、なんだと思う。
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