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依存愛-彼と過ごした3000日-

第7章 『混濁』


「いいの?」


「………………うん」



「車に乗るって意味、わかってる?」



「わかってるよ」




向かいのファミレスに停めてあったしーちゃんの車は、私の知ってる車よりも大きな車になってた。


ファミリーカー、だ。



「しーちゃんが言ったんだよ?おいで、って」


覚悟は出来てる。


しーちゃんの手をとった時点で、もう後戻りなんてできないことも、わかってる。


「ずるいよね、いつもしーちゃんは」


自分で逃げ道をなくしておいて。
言い訳をする理由もなくしておいて。


そーやって、自分の逃げ道は確保するんだね。


「今さら?」


ふ、って。

目を細めて笑うしーちゃんは、車の助手席のドアを開けてくれた。

しーちゃんの香水に混じって、新車の匂い。

それから。


奥さんの為に用意された、ブランケットが綺麗にたたんである。


私がブランケットに視線を奪われていると。

「悪い」

そう言って、ブランケットを取り出し、後ろに片付けた。


それからもうひとつ。


後部座席の、真新しいチャイルド、シート。


これが、現実。


この車は、しーちゃんの奥さんと、産まれてくる赤ちゃんのためのもの。


助手席に乗り込むと、シートがかなり後ろに倒れてる。
お腹のおっきい奥さんの、丁度いい、位置。


ブランケットやシートの位置に、奥さんの大きな圧力を感じる。


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