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依存愛-彼と過ごした3000日-

第7章 『混濁』





「ん」




にっこり笑って、頭のてっぺんにキスをすると。




「やっぱり花は、ちっちゃい方がいいな。あれはあれで、顔が近くていいけど」



しーちゃんの大好きな笑顔が、花をのぞきこむ。



「花」



ふんわりと笑うしーちゃんに、引き込まれそうになるのをなんとか耐えて。



視線を、ふたりへと送る。






わかってる。
花を心配してくれてるの、ちゃんとわかってる。
こんな私を、見捨てもせずに心配してくれることが、どんなにすごいことか。
ちゃんとわかる。


見捨てられても文句は言えない。



『浮気』なんて、生易しいものじゃない。
今から私がしようとしてることは不倫理そのもの。
モラルも現実も何もかも否定しないと出来ないこと。
しちゃ、いけないこと。









「ばいばい、花」




言葉を遮って、背中を向けるさくらは。




そう言って、駐車場に向かって歩いていった。
その後を追うように澪も私へと背中を向けて歩いていく。




見放されたって、いい。



自分から選んだ道だから。
世の中の道徳も倫理も、友達も、恋人も。
全部捨てても欲しいと思う人。


ただ、そばにいたい。


それだけなんだ。





もう1度、しーちゃんの視線に合わせて瞳を見上げれば、瞳の中に自分がうつりこむ。




「………」








この決断は、間違ってる。




しーちゃんを選ぶべきじゃない。




頭の中ではちゃんとわかってる。





でもね。





頭と心は、必ずしも一致しないんだよ。





私の中にも、悪魔はいるんだ。





『バレなければ、大丈夫』





私の中の悪魔が、そう囁いた。


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