第7章 『混濁』
「もう、忘れよう?」
いやだ。
いやだ。
忘れるなんて、いやだ。
「花」
「優生を失うのも怖いけど、しーちゃんを忘れるのもすごくいやなの。優生の傷付いた顔見たくないけど、しーちゃんを忘れられない」
忘れられない。
好きなの。
しーちゃんが、大好きなの。
「なんで?花、なんでそんなに修くんなの?花なら、修くんにこだわらなくてもたくさん大切にしてくれる人いるよ?修くんなんかよりもっともっと…………」
「『なんか』って、酷くない、さくちゃん」
「…………っ」
涙が、止まった。
時間が、止まった。
思考回路も、なにもかも。
止まった気がした。