第7章 『混濁』
「もー何でもない!花、もー帰るから‼」
「あ、花?それ、バンソーコーよりもメイクで隠した方が目立たないかも」
「確かに、それ、超目立つ」
「………………そんなに、目立つ?」
ふたりの大きな頷きに。
1度肩へとかけたバッグをまたおりてみたりして。
「…………さくら、隠せる?」
「程度によるけど」
うっ。
再度硬直。
程度。
程度、って、どの程度?
「いいから、剥がすよ?」
「……………まっ…………いったっ」
澪の声が降ってきたとたん、止める間もなく、首もとに痛み。
「……………あー、なるほどね」
「くっきりだね」
剥がされたバンソーコーが、また同じところに貼り付けられる。
視線を合わせてくれないふたりが余計怖い。
「花、化膿する前に消毒しときなね」
「修羅場、って、怖いね」
「ふたりとも、目が笑ってないよ」
「『浮気の代償』だね」
「なんか昼ドラみたい。かわいー顔して、ドロドロだね、花」
「勝手に昼ドラみたいな題名着けないでよ、澪。それに全然ドロドロじゃないもん。しーちゃんとはもう終わったの」
「ほんとにー?」
「子供産まれるんだって、結城」
「まじ?不倫は止めといた方がいいわ、末路が知れてる」
「だから、しーちゃんはもう関係ないんだってば」
「そんなの、綾瀬さんだって信じないでしょ」
「だから、これなんじゃない?」
首もとをトントンしながら、澪。
「綾瀬さん、ほんわかしてるイメージなのに、怒ると怖いんだね」
「……………………怖かった」
ボソッと呟いた私の声に、同時に振り替えるふたり。
「な、なに?」