第6章 嘘と隠し事の、境界線
「……………っ、何でもない、食べよ?」
「…………うん」
優生の視線が、痛い。
顔、見れない。
自分の意志とは関係ないところで、頭が勝手に思い出す。
だめ。
思い出しちゃ、だめ。
「そーいえば、ドレス、クリーニング出しといたよ」
「え」
「かなりしわしわになっちゃったから、もとどーりになるか微妙だけど」
「ううん、ありがとう」
「明日仕事大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「食べたら、送ってく」
「よろしくお願いします」
「いえいえ」
空気が、ほんわかしてくる。
心も軽くなる。
優生の笑顔が暖かくて、安心する。
大丈夫。
もう、しーちゃんいらない。
優生が入れば、大丈夫。
大丈夫。
忘れられる。
会わなければいいんだ。
しーちゃんだって結婚してるんだし、もう会うこともない。
大丈夫。
大丈夫。