第6章 嘘と隠し事の、境界線
「なんか食べる?」
隣に座り込んでる優生を見上げて、コクンと頷いて。
「おなかすいた」
まだボーッとする頭を働かせないと。
糖分、とらなきゃ。
「よかった」
「仕事、大丈夫?」
「大丈夫。声、出るようになった?」
そーいえば。
少し枯れてはいるけどなんとか出せる。
コクン、と小さく頷いた。
「よかった。俺、仕事戻んなきゃだけど、大丈夫?」
「ゆうは?ごはん、食べた?」
「食べたよ」
車の、中で?
夜も寝てないのに、休憩中も走り回って。
優生の体が壊れちゃうよ。
出せない声が妬ましい。
少し痛みの出てきた喉は、片言の言葉を発するまでの仕事しかしてくれない。
「ありがとう」
掠れる声で、それだけ伝える。
「いーえ、どーいたしまして」
にっこり笑う優生に、キュンって胸が締め付けられた。
こんなに、大事にされたことあったっけ?
こんなに、尽くされたことあったっけ?
すごく、胸があったかい。
我ながらほんと調子いい。
昨日私、あんなことしでかしたのに。
昨日はしーちゃんで、頭がいっぱいだったのに。
今は優生の優しさで胸がいっぱい。
自分が他人なら、いい加減にしろ、とか言いたくもなるもんだ。