第6章 嘘と隠し事の、境界線
「…………………そう」
「……………………っ!」
何も感じない表情で見下ろす優生に、体がビクッと反応する。
「あとは?」
「優生のつけた跡、触られた」
何も考えられない頭は、正直に聞かれたことに答えていく。
「だろーね、くっきり、跡残ってた」
嘲笑するように笑う優生から、視線を外せない。
「あとは?」
「…………………それ、だけ」
「ほんと?」
相変わらず温度の感じない声に。
コクン、と1回、頷いた。
「わかったよ」
温度を持ち始めた声に、少しだけホッとした、瞬間。
いきなり視界が反転した。
「…………………え」
背中に、冷たい床の温度が直に伝わる。
目の前には、さっきまで見上げていた優生の、顔。
押し倒されたことに気づくまで、数秒。
だけど。
頭と腰に添えられた手に、優しさを感じた。
冷たい瞳で、温度の感じない声で話しても。
やっぱり芯は、優生のまま。
押し倒す手は強引でも。
痛みを感じないように、ぶつけないように。
頭と腰に回したあったかい優生の手は、いつもと一緒だった。
「答え合わせ、してい?」
「答え…………なん、の?」
頭と床の間に滑り込ませた左手が、背中のファスナーを下ろしていく。
「ゆ、う?」
「花が嘘ついてるか、体に聞けばわかるだろ?」
「な…………っに、いって…………」
近付いてくる優生の顔を、両手で払いのけようとするけど、簡単に床に押さえつけられた。
全然力なんて入れてないように感じるのに、全力で抵抗してもびくともしない。
すごい、力。
いつも、優生がどんなに気を使ってくれてたのか、手加減してくれてたのかわかる。
「拒否るなら、もう花には触れない」
「え」
「花の前から、消えてあげる」
「ゆ、う?」
「ごめん、今日は手加減、しないから。逃げるなら今のうちだけど」