第6章 嘘と隠し事の、境界線
「……………聞きたいことが、あります」
布団にくるまったまま、くぐもった声で答える。
「はいはい、なんでしょう」
「………………っ」
「なに?」
「いつも、目、開けてたんですか」
「目?」
「………………」
「ああ」
答えない花に、わざとらしい笑い声が、答えた。
「キス?」
「………………っ」
「花のかわいい顔、見逃すはずないでしょ」
「━━━━━っっ!」
さらっと笑い流す内容の言葉じゃないですよね、それ。
優生こそ、自覚してほしい。
言葉の破壊力、半端ない。
て、ゆーか。
今、否定しなかった。
否定して欲しかったんだけど。
否定、しなかった。
いつも?
いつも目、開けてたの?
見られてたの?
ショックすぎて、恥ずかしすぎて。
布団から出られません。
顔から火が出る、って、今使う言葉だったんだ。
さっき。
思わず開いた視線の先で。
優生と至近距離で視線が絡んだ。
足りなかった酸素を急激に取り込んだから、だけじゃなくて。
たぶん驚きで飲み込んだ唾液が気管支を刺激したのかもしれない。
たぶん、きっと。
「俺も花に聞きたいことがあります」
「………………」
もーなにも知りたくない。
恥ずかしすぎて、声も出したくない。
「聞いてもいいですか」
「………………だめです」
これ以上に恥ずかしい事実知ったら、まともに優生の顔見れない。
なのに。
思いきり、布団を剥がされた。
「だめって………………」
剥ぎ取られた布団を奪い返そうと、顔をあげると。
見上げた優生の、悲しそうな表情に。
「え」
一瞬、視線を奪われた。
「……………今日、『あいつ』に、会った?」
「え?」