第6章 嘘と隠し事の、境界線
「━━━━━━ふ、…っ」
苦しくて。
さっきみたいに少しの間も解放なんてしてくれない。
苦しすぎて体が弓なりに反り返る、けど。
優生はそれすらも自分の体重をかけて阻止するんだ。
両手で優生の背中を叩けば。
両手首をとられてベッドに縫い付けられる。
逃げ道なんてどこにもなくて。
苦しさのあまりに目から涙さえ溢れてくる。
「━━━━━んんぅっ」
なのに。
優生はさらに深くへと、舌を絡ませてくるのだ。
「………」
だけど。
あれ?
そうだ、呼吸……。
止めないで、ってさっき。
苦しくなると人間、忘れていた呼吸をちゃんと思い出すもので。
酸素不足だった肺に酸素が入ってくると。
窒息間際だった肺が気管支を刺激する。
「ごほッ、ぉぇ…っ」
唇が離された途端にむせこんだ。
「ごめん、やりすぎた大丈夫?」
心配そうに背中をさすってくれる優生に頷きながらも。
咳き込みが落ち着くのを待つ。
待って、から。
そのまま布団の中へと潜り込んだ。
「ごめん、怒った?」
「………」
「花」
「……………」
「怒ってないならなんか言って下さい」
「冬眠中です」
「冬眠って」
もう1度、布団の中でさらに小さく丸くなる。
「3月ですよ、春が来ますよ」
「………………」
だって。
無理。
さっき。
唇が離される直前。
いきなり楽になった呼吸にびっくりして思わず目、開いた。
開いた、けど。