第1章 夜暁
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「…………………花?」
昔を思い出しなから、思わず漏れた笑み。
「しーちゃん」
それは。
起きたばかりの彼にも気付かれたようで。
「なんか、楽しそう」
すぐに上体を起こして。
座ってる私の頭のてっぺんに、キスをした。
「花、寝てないの?」
「ん、大丈夫。今日夜勤だから。しーちゃん帰ったら、ちゃんと寝る」
「そっか」
大きく欠伸を漏らしながら、ベッドから出ていく彼の体温が、名残惜しくて。
着替えをする彼を目で追った。
「寂しい?」
私の視線を感じとると。
悪戯に目を細めて、彼は私を見下ろしてくる。
「寂しい」
言葉にしたら、それは現実になるのに。
それでも彼は。
言わせたがるんだ。