第5章 対峙
「……………ヒール?」
「え?」
突然。
全然的外れな言葉に戸惑うけど、優生の視線をたどりながら、なんとか頷いた。
「いつもより視線高いから、顔近くて、すっげー破壊力あんだけど」
「は、かい?」
「花の上目遣いは破壊力ありすぎ」
「え?」
破壊力、なら。
優生のスーツ姿も相当なもんだけど……。
とか言ったら、きっと怒るんだろうなぁ。
「よく歩けんな、そんな靴」
視線を無意識に預けたまま黙った私への、たぶん気遣いからくる優生の優しさ。
別に気まずさから沈黙したわけでもないんだけど。
優生にしてみれば私よりも完璧浮いてるわけで。
居心地悪いの承知で、それでもわざわざ来てくれたのはもちろん、感謝してるから。
それに無理してこんな高いの履いてきたせいでけっこう足もパンパンになってるのも、事実。
だから。
「じつはけっこう限界。二次会が立食パーティなんて知らなかったから。」
笑顔でそう、答えたんだ。
「あっちで休む?」
「うん」
優生に促されて奥のソファに座ると、ふわふわの座り心地に体が軽くなる。
「足見せて」
「え、帰ってからでいいよ」
ソファに座る花の目の前で、立ち膝をついて靴を脱がせてくれる優生の行動に。
会場がざわついた。
「優生、みんな見てるから」
「つま先とここ、赤くなってる。履いてるだけできついんじゃない?」
「大丈夫だから」
自分の膝に足を乗せて。
心配そうに見上げてくる優生には悪いけど。
みんなの視線が、限界。