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依存愛-彼と過ごした3000日-

第5章 対峙


「でも、ここ…………」


所謂、『公衆の面前』てやつ。
しーちゃんが結婚してることはここに来ている友達は知ってるわけで。
近くの喫煙所にはたぶん、そのお友達がたくさん、いるわけで。




「ああ………」





チラリと、喫煙所の方に視線を向ければ。
しーちゃんは納得したように私に合わせて喫煙所を、見て。

「大丈夫だろ、喫煙所からは死角になってるしそれに」

「?」


一呼吸、おいて。
しーちゃんはゆっくりと私へと向き直った。






「『不倫』?って聞かれたから、肯定しといたし」



「え…………」




『不倫』




頭の中で、言葉の意味を理解するのに、数秒かかった。





「…………しーちゃん、花…………っ」




「しーっ」




『しーちゃんと、関係戻すつもりないよ』




言うはずだった言葉は、しーちゃんの笑顔に飲み込まれて、形にすることは叶わない。




「彼氏と仲良く、な」





しーちゃんの後ろ姿を見送りながら。



『不倫』



の2文字が。




頭をぐるぐるまわる。




だめ。




絶対、だめ。




優生もいるのに。




絶対、流されちゃだめだ。





『関係、戻すつもりないよ』




なんで言えなかったの。



しーちゃんを前にすると、何も考えられなくなって。



しーちゃんに、逆らえない。



嫌われたくない。



自分の意思とは関係なく、頭が、そう認識する。



……………違う。



頭と、心が、そう認識するんだ。




しーちゃんに嫌われたくない。




それが私のすべて。




だけど。





だけど。




━━━━━━━━っ。





『言えない』んじゃ、ない。
私『言わなかった』。
しーちゃんがまた離れていくのが嫌で、言わなかったんだ。




言わなかった。





「……っ、最低」




自嘲気味にひとりごちた言葉は、だれに聞かれるわけてもなく。ただただ、消えていった。








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