第5章 対峙
しーちゃんの両目に。
花の姿がうつりこむ。
目をぎゅって閉じて。
首を左右に振った。
「ん」
逆らえるわけ、ない。
これはもう、習慣って部類。
「しーちゃん、あの」
「何もしないよ。」
「え?」
「近づかないから、安心して」
「……………………え」
「そんな心配すんなよ、大丈夫だって」
やっぱり、しーちゃんがわからないよ。
さっきまで、機嫌悪かったはずなのに。
いつもと同じ笑顔が、今はちょっと、怖い。
「!!」
嘘。
何。
ここ、廊下。
近くに、喫煙所も、あるのに。
「口止め料」
そう子供みたいに笑って、触れただけの唇は、すぐに離れていった。