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依存愛-彼と過ごした3000日-

第5章 対峙


「こいつはやめた方がいいよ?こっちおいで」




急に、左腕を知らない人に触れられて、背中に冷たい空気が流れ込んだ。



「………………やっ」




気持ち悪い。



ゾワゾワと肌が粟立つ。



「お前らいい加減しろよ」



捕まれた左腕を払い除けて、私を自分の背中に隠してくれるしーちゃん。



「しーちゃん」





「なに?『しーちゃん』だって」

「はは…っ、うける。ねぇ『しーちゃん』、この子ほんとかわいーね」







「こいつはもう売約済み、他あたって」
「はぁ?だって結城お前子供いんじゃん」
「関係ねーよ」
「関係ないって、堂々としすぎじゃねぇ?それ、不倫、認めちゃってんの?しかもここで?非常識すぎ」
「文句ある?こいつは俺のだから、勝手に触ってんじゃねーよ」
「はぁ?言ってることめちゃくちゃ」

「もーいいよ、はいはい、お邪魔しました」

「いいのかよ」

「面倒なの、パス」




ひらひら手を振りながら去っていく人を追う、ふたりの足音。



しーちゃんの背中越しにそーっと見ると、思いきり視線を感じた。



「ごめんな」



「あ、うん、花も」



ぱっと、しーちゃんの腕から手を離すと。

そのまま、建物の中まで手を引かれて連れて行かれた。



「しーちゃん、人が見てるよ」



「構わないよ」




前を向いたまま答えるしーちゃんの声は、低くて。

体が勝手にびくって、反応した。




なんで、怒ってるの?




友達にあんな態度とったの、悪かった?

挨拶くらい、すればよかった?





「しーちゃん、痛い」




つながれた手が、痛い。




「そう、良かった。痛くしてる」




しーちゃんの歩幅にヒールの靴がついていけない。

転びそうになるのを、何とかバランスを保つので精一杯で。



「しーちゃん」



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