第4章 再会
しーちゃんの、言うとおりだ。
花の頭はいつも、しーちゃんを中心にまわってる。
しーちゃんは、そんな花の頭の中まで、全部お見通しなんだ。
トイレから出てくると、ちょうど用意が終わったキレイな花嫁さんが、目の前を横切った。
たくさんの人に囲まれて教会に向かうキレイなキレイな花嫁さんは、一瞬、花の姿をとらえると、歩みを止める。
一瞬だけ目があった澪は。
すぐにまっすぐ前を見て、教会に向かった。
「……………やべ」
つながれた右手に視線を送ると。
しーちゃんのため息が、上から降ってきた。
さっき、澪悲しそうだった。
一瞬、花としーちゃんを見て、すごく悲しそうな顔してた。
優生もきっと。
あんな顔するよね。
しーちゃんに会ったこと言ったら、どんな顔する?
しーちゃんと、キスしたこと知ったら、どー思う?
せっかくしーちゃんと離れたのに。
やっぱり私は、なんにも変われないんだ。
つないだこの手、放せない。
「いや?」
右手に視線を送ったまま、動かない私に、しーちゃんの声が降ってきた。
顔をあげると。
大好きなしーちゃんの、顔。
しーちゃんの、声。
香水。
しぐさ。
あったかいぬくもり。
全部、ずっとずっと欲しかったもの。
忘れられなかったもの。
「いやじゃ、ない」
「ん」
短くそう返事して、微笑んでくれる笑顔が好き。
「やっぱり花は、変わんないな」
優しく頭を撫でてくれる、その手が好き。
「俺がいなくて、寂しかった?」
甘く囁くような、その艶のある声が好き。