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依存愛-彼と過ごした3000日-

第4章 再会


体が、覚えてる。


しーちゃんのキス。
体温。

頭が、ちゃんと覚えてる。
蕩けるような、甘いキス。
体の芯からどろどろに解かされていく、この感覚。


「……っと」


ぐらついた私の体を、しーちゃんが右腕で受け止めると。


「気持ちよさそうな顔、もいっかいする?」


悪戯に目を細めて笑うしーちゃんに、危うく吸い込まれそうに、なる。
たぶん。
もし、ドアの向こうで男の人たちの笑い声が、しなければ。
ここが男子トイレなんかじゃ、なかったなら。
間違いなくこの瞬間、花は流されてたんだと思う。








「冗談だよ」



ドアの向こうから聞こえた話し声に一気に青ざめた花を、からかうように一笑して。
しーちゃん、彼、は。
あやすように額へと羽のように軽いキスを、くれるのだ。



「これみたら、意地悪したくなった」




指先でトントン、て。
首もとに触れるしーちゃんは、笑顔で。


余裕で。



いつも私ばっかり、ふりまわされる。




「花が抵抗するなんて、はじめてだったし。なんか意地悪してやろーかなって。悪かったよ、こんなとこで」

「……………だってしーちゃん、結婚、してる、し」


「…………そっち?」
「え?」


驚いた声に、しーちゃんを見上げると。
私の視線に気付いたしーちゃんは、にっこりと笑って。


「やっぱり花は、いい子だな」


頭をぽんぽんて、撫でてくれた。



「なに?」
「なんでもないよ。誰か来る前に、行くか」



彼らが出て行ったのを確認すると。
しーちゃんは私の右手を取って、歩きだした。


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