第4章 再会
と、同時に。
バランスを崩した足下は。
簡単に崩れていく。
「そんな靴はくから」
床にお尻がくっつく前に、しーちゃんの両手で支えられた体は。
壁に寄りかかったまま、しーちゃんとの距離、ゼロセンチ。
抱き締められたまま、身動きができない。
「今までそんな靴はいてた?」
見上げることもできないくらいに、抱き締められて。
また、息が苦しくなる。
「彼氏の趣味?」
大好きなしーちゃんの、香り。
鼻を掠めるその匂いに頭がクラクラ、する。
「しーちゃ…」
なんとかしーちゃんの腕から抜け出して、そのまま彼を見上げれば。
しーちゃんは人差し指を、口元へと持っていき私を見下ろしてきたんだ。
「?」
意味がわからずキョトンと首を傾げる私を、目を細めて見下ろすしーちゃんと視線が、絡む。
その、直後。
「!!」
ガタン、て。
ドアのあく音と一緒に男の人の、話し声が耳へと届いた。
そうだ!!
ここ、男子トイレ。
再度慌ててしーちゃんを見上げ見れば。
口元へと持っていった人差し指はそのままに、彼はいたずらに口元を緩めたんだ。
え。
昨日つけられたキスマークと同じ場所に、生あたたかい、感触。
「しーちゃん?」
思わず声を出した私の耳元で。
悪魔が囁いた。
「声、我慢できる?」