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依存愛-彼と過ごした3000日-

第4章 再会


「ん?」


少しだけ戻った脳の機能。


ゆっくりと見上げた彼は。
記憶の中と少しもかわらない笑顔で。



「会いたかった?」




記憶の中と、全然違わぬ愛しい声。





「花?どーした?」



その場で全ての機能を停止させた私へと、伸ばすのは昔と全然変わらぬ温もり。



「花?おいで?」



首を傾げながらも笑顔で手を広げる彼に。
躊躇、なんて単語は存在しない。






「しーちゃん…………っ」


ぎゅーって抱きつくと。
しーちゃんの両手が背中に触れた。




「花」
「しーちゃん……っ」


「ん」


背中に触れていた右手が、頭に乗せられると。

「いい子にしてた?」


って、笑顔で頭を撫でてくれるのは記憶の中の優しい手。


「あーあ、顔ぐじゃぐじゃ」

少し屈んで、涙を拭ってくれるあったかい手も。

「せっかくかわいくしてんのに。マスカラ取れるよ」
「……今のマスカラは泣いたくらいじゃとれないもん」
「そうなんだ」


しーちゃんのぬくもり。
声。
香り。

笑顔。


全部、大好きなそれと変わらない、のに。


……-なの、に。




「ん?」
「結婚、したんだよ、ね?」


やっと戻った思考回路が、赤信号を出す。

一歩、後退した。


「うん、したよ、結婚」

左手薬指に嵌まってる指輪を簡単にとると、スーツのポケットにしまって。
そのまましーちゃんは、私を反転させた。
背中が、壁にくっつく。




「……………やだっ」





目の前にしーちゃんの顔がアップになって。
両耳へと感じた、しーちゃんの手の温もり。
咄嗟に、近づいてくるしーちゃんを顔を反らして拒絶した。





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