第4章 再会
できもしないこと。
たくさん考えた。
しーちゃんの嘘をたくさん思い出しても。
しーちゃんの最低なところ思い出しても。
嫌いになるどころか、会いたくなって。
声が聞きたくなって。
たまらなかった。
嫌いになんてなれなくて。
心が、押し潰されそうになる。
「おいで?花」
「まだ、コーヒー出来てない」
「花」
時々。
しーちゃんの声と、重なる。
しーちゃんもよく、こーやっておいで、って、艶のある声で私を呼んだ。
しーちゃんの有無を言わせないいい方と違って、優生のはすごく優しい。
「よくできました」
隣に座ると、嬉しそうに笑う優生が好き。
よくできました、って。
頭を撫でてくれる、その手のひらも。
ぎゅーって抱き締めてくれるそのぬくもりも。
全部、大好き。
嘘なんかじゃない。
大好き。
「もう、子供じゃないよ?」
「知ってますよ?」
しーちゃんとは違うキスの味も。
匂いも。
体温も。
優生の重さも。
すべてが愛しい。
全体重をかけるしーちゃんと違って、優生は私に絶対体重をかけない。
優生の優しさに、惹かれた。
どんなに大切にされてるか、わかる。
感じる。
「………っ」
「花、我慢しないで、聞かせて」
「……っり…っ、やぁ…っ」
「噛むならこっちね?花でも、花を傷付けたら許さないよ?」
「や……っ、あ、ああっ」
丁寧な愛撫。
優しい指先。
すごくすごく、優しくて。
こんなに優しく抱かれたのは初めてで。
どんどん、好きになる。
「花、気持ちいい?」
「……っ、ぃ、」
「花の中、離れたくない、って、すごく締め付けてくる。ほらここ、入ってるのわかる?」
「ひ、ぁッッ」
おへその下あたりを、指先がつー、っとなぞっていけば。
ぞくぞくとした感覚が爪先から上がってくるみたいだ。
「花、愛してる」
「花、も」
だけど。
『愛してる』だけは、まだ、言えない。