第1章 夜暁
「花ちゃん?かわいい名前だね」
そう言って。
当たり前のように目の前に座る彼は、今にして思えばほんと、慣れてたんだと思う。
こーゆー場にも。
女の扱いにも。
それから程なくして。
澪と。
彼の高校時代からの友人、藤崎さんが、付き合いだした。
彼、藤崎 亘。
8年たった今では、澪の旦那さま。
彼は、はじめてあった時からずっと、澪のことしか見ていない。
同じ時に、同じ時間と場所から生まれたはずの私たちの恋は、今では全く別のものだ。
あの頃。
そう、たぶん。
彼に出逢ったあの頃なら、もしかしたら同じようなものだったのかもしれないのに。
澪たちの間に生まれたそれと、私としーちゃんの間に生まれたそれが。
同じだったなら、そう願わずには、いられない。