第4章 再会
「会ってるの、まだ」
「会ってないよ。最後に会った時に聞いたから」
「ねぇ花、結城の奥さんね、同い年って知ってた?」
「ぇ」
「年下の彼女とはとっくに別れてたんだよ。新しい彼女作って、その女妊娠させたんだよ。知ってた?花」
知らない。
そんなこと、聞いてない。
「調子いいことばっか並べて、結局花騙されてたんだよ?」
知らない。
知らない。
聞きたくない。
「花」
「もーいい」
「そーゆーやつなんだよ、あの男」
「もーいいってば」
「もう忘れなよ、あんな最低なやつ」
「澪っ!」
自分でもびっくりするくらいの、大声。
聞きたくない。
しーちゃんの話はもう、聞きたくない。
まだ乾いてないの。
古い傷口でも、まだ膿み続けてる。
これ以上、傷口えぐらないで。
「………ごめん」
「あたしこそ、無神経だった。ごめん」
「しーちゃんのことはもーいいの。ね、今日は花おごる!!食べよ食べよ?」
「……うん」
ごめん澪。
忘れるなんて出来ない。
この傷口は、一生塞がることはないんだと思う。
たぶん一生このまま、膿み続けるんだ。
だから膿み続ける傷も見えないように絆創膏貼っておくの。
見えないから。
それだけしか、出来ないの。
膿み続ける傷を見ないフリする事でしか、自分を守れない。
ごめん。
ごめんね。